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タ イ ト ル:大規模ゲノム疫学研究の統合情報基盤の構築

発  表  者:松田 文彦

所       属 :京都大学大学院医学研究科

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       旨 :ゲノム疫学研究は、大集団の長期の前向きの観察により、疾患を含む種々の形質と遺伝因子や環境因子などの多様な因子との関連や因果関係、さらに、それらの相 互作用を明らかにすることが目的である。そのためには、被験者からゲノム情報や表現型およびその中間形質や環境曝露情報を長期にわたって収集し、解析に適 した形に標準化の上、適正な方法で迅速に解析しなければならない。そこで我々は、日本人集団を用いたゲノム疫学解析で得られた情報を集約し、標準化・一元 管理のうえ研究者に公開し、それらを用いた解析で得られるオリジナリティーの高い研究成果を加えて世界へ発信することを目標として、京都大学医学研究科が 滋賀県長浜市および長浜市民と共同で進めている先進的ゲノムコホート研究である「ながはま0次コホート事業」の統合情報基盤を以下のように構築し、その成果をバイオサイエンスデータベースセンター(NBDC)を通して公開する。

1. ゲノムコホート研究で網羅的に収集された一万人の参加者の生活習慣・環境情報、臨床情報、ゲノム・メタボローム情報を標準化し、データベースを構築することで、ゲノム疫学研究の情報基盤の整備をおこなう。
2. 追跡における参加者の疾患情報の獲得には、京都大学で開発された電子医療情報(EHR)システム「まいこネット」を長浜市に導入し、基幹病院および開業医 からの疾患情報を取得し、得られた電子カルテ情報を疫学研究に利活用できるように標準化したのち、データベースに蓄積する。
3. それらの情報を、セキュリティーの強化により個人情報の漏洩に最大限の注意を払った上で、倫理指針の制約の範囲内で積極的に公開し、医学・生命科学研究者の研究に供する。
4. これをモデルケースとして、同様の研究をおこなう際に即時活用可能なかたちでデータベースの枠組みを提供し、他のゲノム疫学研究で蓄積された遺伝型・表現型データを標準化した後に連結、共有することで、個別の研究で得られた情報の一元化によるそれらの再利用を促す。

  予防医学に関わるヒト疾患研究に供されるこういった日本人の詳細かつ網羅的なデータは、バイオサイエンスデータベースセンター(NBDC)が提供する情報 基盤の中でもきわめて大きな価値を持つものである。また、ながはま0次コホートをモデルケースとしたこのような試みは、大規模ゲノム疫学コホートの情報基 盤のプロトタイプとなるばかりか、将来の国民一人ひとりが自身の医療情報を持つ「パーソナルヘルスレコード(PHR)」の情報提供先として機能する汎用性 の高い健康情報管理システムにつながることが期待される。