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タ イ ト ル:微生物エンサイクロペディアの構築に向けて

発  表  者:黒川 顕

所       属 :東京工業大学大学院生命理工学研究科

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       旨 :数学的基盤が乏しいライフサイエンス研究において、知識の集積体であるデータベース(DB)は、知識の参照のみにとどまるものではなく、新たな研究分野を切り拓く上で欠く事のできない極めて重要な研究基盤である。
  微生物研究の歴史は古く、これまでに蓄積された知識は、分類学的情報、菌株保存情報にはじまり、各種オミックス情報、メタゲノム情報など多様かつ膨大なも のとなっている。この微生物研究においては、研究者ごとの分野特異性が高く、自らの研究対象外に興味の範囲を拡大する機会は稀であったため、ゲノム情報の 蓄積が進んだ現在でも、通常の微生物研究者がこれら膨大な情報を横断的に活用する動きはあまり一般的ではなかった。しかし、新型シーケンサーに代表される 実験機器類の飛躍的なハイスループット化により、ゲノムサイズが小さい微生物は比較的容易にゲノム解析が可能であることから、これまでゲノム研究と無関係 であった研究者が自らゲノム解析を行うケースが増えてきた。一方で、ハイスループット機器により生み出される情報は極めて膨大であり、微生物学に革新的な 進展をもたらす可能性を有しているにもかかわらず、個々の微生物研究者やコミュニティが自らの研究のために活用することが困難となっている。これはまさに DBシステムの問題であり、効果的な統合DBの構築によって、この状況を改善し大きな進展をもたらすことが期待できる。
  そこで我々は、ゲノム情報を核として様々な微生物学上の知識を統合し、幅広い分野での微生物学の発展に資することのできる「微生物エンサイクロペディア」 の構築を目指している。これらデータの統合化は、微生物の体系的な理解を促進し、これまでの「仮説検証型」の研究のみならず、膨大なデータの中から新たな 仮説を導く「データ駆動型」の研究を強力に推進する事を可能とする。学術、医学、産業、環境などの各領域において、分野特異的のみならず分野横断的な新規 研究に資するターゲットを抽出することが容易となり、ゲノム情報を核とした我国の微生物研究の発展に寄与できると考える。