演題詳細


 

タ イ ト ル: 「脳疾患画像データベースの医学への応用:アルツハイマー病の治療をめざして」

発  表  者: 岩坪 威

所    属 : 東京大学 大学院医学系研究科 神経病理学分野 / J-ADNI

発 表 資 料 : 講演動画 / 講演スライド 岩坪先生スライド

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要    旨 :  高齢化社会の進展に伴い、精神神経疾患、ことに認知症性疾患に対する抜本的な対策は焦眉の急である。高齢者認知症の主体をなすアルツハイマー病(AD)については、過去四半世紀に分子レベルでの病態研究が進み、病因タンパク質Aβなどを標的とする疾患修飾療法(根本的治療法)が臨床開発レベルに到達しつつある。しかし、認知機能検査を主体とする従来型の臨床的評価指標は変動が大きく、治験の精度に影響を与えることが問題となってきた。このため、画像・体液生化学・遺伝子などのバイオマーカーを加味した進行度評価と治験における薬効評価方法の確立が喫緊の課題となっている。脳画像評価の主要技術であるMRI、PET、脳脊髄液などの体液生化学バイオマーカーを駆使して、軽度認知障害(MCI)などの早期段階におけるADの進行過程を評価し、疾患修飾療法の治験方法を確立することを目的にAD Neuroimaging Initiative (ADNI)臨床研究が2005年、米国で開始された。本邦でも2007年、厚生労働省、経済産業省/NEDOの支援によりJ-ADNIが38臨床施設において開始され、2012年現在545例が3100ビジットを越えるフォローアップを完了している。J-ADNIではアミロイドPETや髄液検査の進行予測における有用性、MRI脳容積測定による精密な脳萎縮の評価法の確立などの成果が得られつつあるが、画像・生化学・遺伝子情報・臨床心理検査に及ぶ、大量のマルチモーダルな臨床データを正確に収集・収納し、相互の連関を解析し、その応用範囲をアカデミックから産業・レギュレーションにまで拡大し、国際的なデータシェアリングをも可能とするためには、公的データベース上での公開が必須である。J-ADNIは、包括脳・精神疾患画像データベースと連携して、難治性脳疾患の解明と治療法の開発に貢献すべく、疾患脳画像統合化データベースの構築を進めている。その現状と将来展開について紹介したい。