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タ イ ト ル:ヒトゲノムバリエーションデータベースの開発

発  表  者:徳永 勝士

所       属 :東京大学大学院医学系研究科

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       旨 :大規模SNP(一塩基多型)タイピング技術の飛躍的な向上と、HapMapプロジェクトやdbSNPに代表されるヒトゲノム全域のSNP情報の充実により、2006年以降、SNPを用いたゲノムワイド関連解析(GWAS: genome wide association study) が大きな潮流となった。現在までに2,000以上の疾患関連SNPが同定され、疾患発症の機序や薬剤応答性の個人差の理解に大きく貢献している。GWAS により産出されるデータは大変有用かつ膨大であることから、データベース構築によるデータの半永続的な保管と公開、および研究者間の共有の体制作りが欧米 を中心に進んでいる。我々も文部科学省「統合データベースプロジェクト」において、健常者SNPデータベース、GWASデータベース、CNV(コピー数変 異)データベースを構築し(https://gwas.lifesciencedb.jp/)、データの登録と利用を呼び掛けてきた。1)2)

  一方、最近の超並列シークエンシング技術の革新的な発展により、1,000人ゲノムプロジェクトや国際がんゲノムコンソーシアムをはじめとする大規模なリ シークエンシングプロジェクトに加えて、難治性希少疾患などの原因遺伝子の同定を目指したリシークエンシングも盛んになっている。超並列シークエンサーに よる解析においては、全ゲノムあるいは全エキソームの塩基配列を決定することが多いため、データ量はGWASよりさらに増大し、発見される新規変異も膨大 な数となる。我々は、これらの情報の集約的管理を可能とするために、科学技術振興機構「統合化推進プログラム」において、「ヒトゲノムバリエーションデー タベース」を構築している。このデータベースでは、一塩基置換/挿入/欠失のみならず、より大規模な挿入/欠失などの構造変異も収集し、疾患感受性、薬剤 応答性などの表現型と変異の関係や、変異を共有する疾患群を俯瞰できるようにしている。また疾患関連解析のために、これらの登録データおよび1000人ゲノムプロジェクトなどの公開データから日本人のコンセンサス配列とその変異のリストを構築し、提供していく予定である。

 ヒトゲノムバリエーションデータの公開・共有方針に関する倫理的配慮も合わせて紹介したい。


1)    Koike A, et al. J. Hum. Genet. 54(9): 543-546 (2009).
2)    Koike A, et al. BMC Genet. 12: e29 (2011).